


ほんとの君に会いたくて
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基記
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基記
今日の天気
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基記
こんなに明るくて
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基記
こんなに寂しい
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未菜子のスマホに表示された写真とメッセージ。
鮮やかな灰色の空から無数の雨粒が落ちている。
しかし、送り主に心当たりは無かった。 -
未菜子
(なんだろう)
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未菜子
(誤送?)
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未菜子
(それとも)
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未菜子
(返信するとウイルスに感染するとか)
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未菜子
(新手のそーゆー手段?)
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不審に思った未菜子は、しばらく様子を見ることにする。
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基記
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基記
こんな天気だと
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基記
誰もいない
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基記
みんな家で遊んでるんだね
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基記
あと少ししたら
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基記
杏も一緒に遊べるから
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基記
そしたら
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基記
そのときは…
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基記
こんな天気じゃなくて
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基記
青い空が見えてるといいね
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未菜子
(あ…)
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未菜子
(これ)
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未菜子
(誤送だ)
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未菜子
(ほんとは杏っていう子に)
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未菜子
(送ったんだ)
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未菜子は返信タブを開き、初めて基記にメッセージを送る。
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未菜子
あの
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未菜子
このメッセ
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未菜子
私宛じゃないよね?
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基記
え?
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未菜子
えっと
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未菜子
名前
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未菜子
合ってる?
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基記
え…
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基記
あ…
つづく
アイツにだけは!
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4月。新学期。始まりの季節。
受験を乗り越えて、オレも今日から高校生。そして…長年のライバルのアイツも -
勇太
れーじ!
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勇太
お前何組だった?
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玲司
B組
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玲司
お前は?
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勇太
A!!!!!
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勇太
勝ったな
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玲司
は?
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勇太
A組ってB組よりかっこいいだろ!?
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玲司
…何を根拠にお前がそういうのか俺には理解できない
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勇太
なんとなくだよなんとなく!
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玲司
そうか。じゃあな。
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勇太
まてよ
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勇太
待って
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勇太
あーえっと、お前のクラスかわいいこいる?
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玲司
そういう話は興味がないな
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勇太
バッサリか!
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勇太
なんだよつまんね~
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勇太
そんなんだから玲司はモテないんだぜ
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玲司
今年のバレンタインデーにもらったチョコレートの数はお前より多かったと思うが
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勇太
オレはその1週間前インフルでやすんでたからノーカンだ!
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玲司
何がノーカンになるんだか…
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勇太
出席日数ぶんオレがハンデあるだろ
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玲司
そういうものか?
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勇太
そういうもんだろ
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玲司
お前がそういうならそうでもいいが…
つづく
春待ちの恋心
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はじめて見た時、真っ直ぐで、強くて優しい目をしているのが印象的だった。
弓道部の二つ上の優先輩。格好良くて優しい、皆の憧れ。
同性同士だなんて気にならないくらい想いが大きくなるのに、そう時間は掛からなかったと思う―。 -
咲
私、先輩の事が好きです
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優
えっ…
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遅めの入部をしてからまだ三ヶ月。
弓道の事を覚えるよりも先に、部室棟の裏で気持ちを伝えた。 -
咲
女の子同士だからとか、関係ないと思っています
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咲
よかったら、お付き合いしてください…!
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優
あー…ありがとう、気持ちは嬉しい
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優
けど、ごめん。悪いけどそれは一過性のものだと思うから…
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咲
え?
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優
ごめんね、いっしょくたにするのは良くないと思うんだけど
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優
私に告白してくる女の子って、大体が憧れと恋心を取り違えてるから
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咲
そんなことないです、私は本気です
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優
うん、えーっと、皆結構そう言うんだけど
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優
こういうのって、思春期特有のものだと思う…
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咲
どういう…意味でしょう
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優
そのままだよ
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優
私に告白してきたところで、断られたらその後は結構コロッと乗り換えるというか
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優
なんだろう、目が覚めたのかわからないけど
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優
憧れだけだったって謝ってくる子も居たりするんだよね
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咲
そんな…!
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優
悪い事は言わないから、その気持ちを的に向けてほしいな
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優
そのうちこれが憧れだったんだって気付くと思うから
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咲
そんなこと、ないです
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咲
私は…あんまり同性を好きになった経験はないですけど
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咲
でも、これは恋心だって思ってます!
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優
早とちりは良くないよ
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優
まだ私と知り合ってそんなに経ってないでしょ?
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優
それに、もともと女の人が好きだっていう訳じゃないなら
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優
なおさらそんな簡単に判断しない方がいいと思うな
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咲
優先輩…
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気のせいだろうか。
いつもの先輩の強い眼差しとは違い、なんだかとても寂しそうに見えた。
同時に、このまま引き下がってはいけない気がする、と直感で思った。つづく